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少年サポートセミナー

家庭内暴力

 やや古い出来事になりますが、昭和53年に東京の高校生が、長期間にわたり母親に暴力を振るい続け、それを見かねた父親が息子を金属バットで殴って殺してしまったという痛ましい事件が起きました。そして、この事件がきっかけとなり「家庭内暴力」という言葉が世間に広まりました。
 家庭内暴力は、読んで字のごとく家庭内で起きる暴力のことですが、日本では一般的に子どもが親に対して暴力を振るうことを指し、同様に家庭内で起きる暴力であっても、親が子どもに暴力を振るえばそれは児童虐待と言い、夫が妻に暴力を振るうものはDV(ドメスティックバイオレンス)と呼ぶことが通例となっているようです。
 ここでも、子どもが親に暴力を振るうこととして説明を進めていきます。

 親の育て方が悪かったと見る方や、被害に遭われている親自身もそう思っていることが多いようですが、決してそうではありません。親が暴力を誘発している場合がないわけではありませんが、だからといって親がそもそもの原因であるとすることは間違っていますし、解決を図るために有効な考えでもありません。
 家庭内暴力を行っている少年に、直接・間接に接して感じることは、何かにつまずき、挫折感を抱いていることが多いということです。つまずくのは、友人作りであったり、学校生活や受験であったり、就労生活であったりと、人それぞれです。挫折し、不適応感が強くなり、引きこもってしまう少年達もいます。

家庭内暴力のイラスト 家庭内暴力の背景には、このように発達上の課題に対する挫折があり、その挫折によって生じた鬱屈した気持ちが、親への暴力となって現れているように思えます。つまり、挫折したことを親のせいにして暴力を振い始めるというのが一つの典型のようです。
 暴力の程度も、暴言はひどいが暴力は押すとか突き飛ばす程度というものから、人には向かわないが家具や家財などの物に当たることにとどまっているもの、高じて親が骨折するほどの激しい暴力を振ったり、刃物を持ち出し逃げる家族を追いかけ回すものまであります。暴力は、不適応の期間が長引くにしたがってエスカレートしていく傾向があるようです。

 何かの課題に挫折している場合が多いと述べましたが、家庭内暴力の背景にある問題は、当然そればかりではありません。数は多くはありませんが、子どもの精神に何らかの障害等がある場合もありますので、こうした場合は、精神科医等に相談してみることが必要です。各都道府県には精神保健福祉センターがあるので、ご利用されることをお勧めします。

 実は保護者の方もこのことが心配で、精神科等に相談したり、子どもを受診させたりしていることは、少なからずあります。しかし、上述した発達上の過程で起きている場合は、精神障害ではない場合が多く、この場合、医療といった観点から少年に関わることが困難になり、大半がここで行き詰まってしまうことになります。こうなると、保護者はどこに相談をすればよいか分からなくなり、困ってしまいます。家庭内暴力の相談を受けてくれる機関としては、警察、児童相談所、教育機関等がありますので、地域の専門機関にご相談して下さい。

 家庭内暴力は、家庭という密室で起きます。翻せば、密室でないところでは起きません。家に来客がある時とか、単身赴任中の父親の帰省時は暴れないものです。ですから、家庭を密室化せず、人の出入りを多くするなど、風通しを良くすることが効果的と言えます。親が外出することも風通しを良くすることにつながりますので、買い物に出掛ける、友人宅を訪問することも有効です。専門機関に相談に行くことは、外出することになりますので、この意味からもご相談されることをお勧めします。

 また、あまりにも暴力が激しい時は、親子の分離が必要になります。親がどこかに避難するのが一つの方法ですが、これには、残された子どもの生活をどうするかということと、いつ、どのようにして帰宅するかということを検討しなければなりません。

 もう一つは、暴れている子どもを家庭から引き離すことですが、子ども自身が家から離れたいということはほとんどなく、そうした子どもを、どのタイミングでどこに預けるかが最大の問題になります。子どもを預かってくれる場所として考えられるのは、親戚宅や病院、公的施設等ですが、どこが有効かはケースによって異なってきます。また、病院や公的施設は、親の訴えだけで子供を預かってくれることはありません。

 親として、被害を受け続けているだけに出口のないトンネルに迷い込んだような不安を感じておられるかもしれませんが、あきらめずに取り組めばきっと解決に至ります。一人ではくじけてしまうことも多いでしょうから、そうした意味からも専門機関に相談して、支援を得ましょう。

平成31年2月
北海道警察本部少年課少年サポートセンター