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署長あいさつ


 
 9月18日に執り行いました令和7年度第二回目の警察署協議会に、北海道公安委員会からオブザーバーとして山村委員のご臨席を賜りました。当協議会委員からは警察署の業務運営に対する貴重なご意見をいただきました。警察署の業務運営に反映させたいと思います。

 今回は「最近の薬物情勢」をテーマに、大麻等の違法薬物が若年層に広がっている実態をご説明したところ、ソーシャルネットワークサービス(以下「SNS」という。)の使い方や子どもの躾、近年における親と子どもの関係、教育現場における教師の置かれている環境、監護者の責任、周りの大人と子どもの距離感などに議論が発展しました。そのなかで私が感じたことをお話しします。
 なお、以下は私見であることをご承知願います。

 スマホは私たちの日常生活に不可欠なものとなりました。銀行口座、通勤・通学定期、各種サービスを受けるときの会員登録、各種予約・決裁機能、情報共有ツール、翻訳機能など枚挙にいとまがありません。
 私たちの年代は社会人として経験を積んだ後に携帯電話が登場し、SNSの世界が広がりました。したがって、社会に潜む危険性の知識が備わった状態でSNSの世界に接することができたのです。しかし、思春期を迎える頃にSNSの世界が広がっている子どもは、この知識が不十分な状態でSNSの世界に入ってしまうのです。
 真実と虚構が混在した世界がSNSです。便利の裏側にある危険性を合わせて子どもに教えないといけないのです。
 SNSの正しい使い方、そこに潜む危険性を教えることが、私たち大人が、いま取り組まなければならない最重点課題だと思うのです。SNSの世界には、違法薬物の密売、福祉犯被害、児童ポルノの拡散、闇バイトの勧誘、そしていじめ問題が潜んでいます。

 かつては、違法薬物を入手するためには、売人と呼ばれる者と接点が必要であり、普通の日常生活を送っている子どもは縁がない世界でした。ところが、SNSの普及によって違法薬物を入手する方法は激変します。
 違法薬物の取引には隠語や絵文字が使われます。例えば「野菜・手押し」で検索すると、大麻の直接取引の世界を見ることができます。さらに、「絵文字」を使うことで、薬物取引に疎い大人に気づかれない「秘密の取引」を印象づけます。
 密売人は隠語化した販売広告に反応した客を秘匿性の高いアプリへと引き込み、そこで注文を受け付けて、受け渡しの方法を決めます。この取引はスマホの中で行われており、監護者、教師、警察など大人の目が届かない世界です。
 今では、スマホを持つ大学生、高校生のほか、中学生でも興味があれば違法薬物を容易に入手することが可能です。
 監護者は、薬物乱用防止の啓発ポスターや事件検挙報道を見たとき、自分たちがいる世界とは別世界の話ではなくなっていることに気づかなければなりません。SNSの普及によって、普通の子どもが簡単に違法薬物を入手可能になった。それが、若年層に大麻が広がっている原因のひとつです。

 スマホの使い方を考える機会があっても良いと思います。幼子が親の顔を見て、話しかけているのに、親はスマホ操作に集中してコミニュケーションが一方通行になっている風景をみかけることがあります。子どもにスマホ依存を説いても、大人の習慣行動を見直さないと子どものスマホ依存は解消されないと思います。

 警察はインターネットに広がる違法情報や有害情報を発見し管理者等に削除依頼をして健全性を維持する活動をおこないます。しかし、これだけでは不十分であり、やはり日常生活の中でスマホとの距離感、SNSの世界の危険性を高校生、中学生に教えないと、事件の当事者になってしまう子どもが増えると感じています。

 
 令和6年度の犯罪白書を見ると、令和5年中、刑法犯により検挙された183,269人のうち、再犯者は86,099人、初犯者は97,170人、再犯者率は47.0%でした(図1参照)。

 図1 【刑法犯 検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移】



 薬物犯罪により検挙された20歳以上の同一罪名再犯者の割合を比較すると、令和5年中、覚醒剤取締法違反により検挙された5,808人のうち、同一罪名再犯者は3,894人、同一罪名検挙歴なしは1,914人であり、同一罪名再犯者率は67.0%になります(図2参照)。刑法犯再犯者率の47.0%を20ポイントも上回っています。

図2 【覚醒剤取締法】





 令和5年中、大麻取締法違反により検挙された5,260人のうち、同一罪名再犯者は1,407人、同一罪名検挙歴なしは3,853人であり、同一罪名再犯者率は26.7%になります(図3参照)。

 大麻取締法違反の同一罪名再犯者の検挙人員自体(令和5年は1,407人)は、同一罪名再犯者率が同年と同程度である平成30年(25.6%・806人)と比べると相当増加していますが、それが同一罪名再犯者率にの大幅な上昇につながっていないのは、同一罪名検挙歴のない者の検挙人員も同様に相当増加していることによるものといえます。
 覚醒剤取締法違反については、改めて再犯防止策が重要となります。
 また、大麻取締法違反については、再犯防止策が重要であることに加え、新たに大麻に手を出そうとする初犯者の増加を食い止めるための犯罪予防の施策が重要であるといえます。

図3  【大麻取締法違反】




 9月26日、東区内において、令和7年度、地域安全大会及び青パト出動式をを開催しました。公務多忙のなか神東区長はじめ、札幌東交通安全協会、札幌東防犯協会連合会、札幌東警察署少年補導員等連絡協議会及び各地区連合町内会のご参加をいただき、東区内の防犯及び交通安全の気運を高めることができました。ありがとうございました。

 10月11日(土曜日)から20日(月曜日)までの10日間、全国地域安全運動がおこなわれます。引き続き、犯罪のない安全で安心な地域づくりにご協力をお願いいたします。

【開始式の様子】



                            令和7年10月
                              東警察署長 長谷川 孝之