○「刑事の誓い」の制定について
昭和44年7月1日
道本刑第1480号(務、教、監、合同)
/道本部各部、課(室・隊・所)長/道学校長/各方面本部長/各警察署長/あて
普遍的な警察官の信条を示した「警察官の信条(42.11.6付道本教甲第1008号)」とあわせ、特に刑事警察官に対する精神面の教養の資とするため、このたび別添のとおり「刑事の誓い」を定めた。
新任刑事に対する教養にはもとより、刑事警察官のあいことばとして捜査検討会、会議時における引用等、幅広く活用されたい。
刑事警察以外の部門にあつては参考とされたい。
なお、この「刑事の誓い」については、別に、警察手帳折込み用の印刷物を作成し全刑事警察官に配布するほか、オフセツト印刷により刑事室等掲示用を送付する予定である。
イメージ−刑事の誓い
〔趣旨〕
いわゆる刑事の分野においては、永年の伝統と気風で培われ、引継がれた独特の誓いがある。それは、仕事の役割りによつて左右されず、すべての捜査活動に共通する。むかしも、いまも、そして将来も、一貫して引継がれる刑事の信念と決意と心情を象徴したものである。
「刑事の誓い」は、われわれ〜組織体として、共通の仕事を処理するものとして、刑事仲間としてのわれわれを意味する。〜自らが考え、自らをみつめ、自らに訴えて、あるべき刑事の姿を求め、そしてえがいたものである。
〔説明〕
イメージ 刑事の誓い イメージ
◎社会正義のために
『ぼくのお父さんはケイジです。ケイジは、ぼく達が安心して遊べるように、世の中の悪い人たちとたたかつているのだそうです。「いつになつても悪いヤツがいて仕事がいそがしいよ。」とお父さんがいいます。ぼくは、早く悪い人がいなくなればよいと思います。』
へこたれまい。持てる力を尽して世の中が、少しでも明るくなることがわれわれの生甲斐なればこそ、大多数の善良な人々がそれを待つている。
―これがわれわれの使命である―
◎打てばひびく
人は生れながらにして視、聴、嗅、味、触の五官の感覚を備え、その成長とともに、敷鑑、土地鑑、人の勘を得る。
刑事の五体には、常に感と鑑と勘が脈動する。「音なきに聞き、姿なきに見る」第二の天性。ときの流れに敏感なセンス、素早い判断力、そしてテキパキとした動き。
―これがわれわれの感覚である―
◎腰軽く粘り強い
電話のベルで腰浮かせ、片ことの会話でヤマを知り、現場にむけて走りつつ「いつ、どこで、だれが……」を口ずさむ。
ひとたび極悪と取り組めば、水火もいとわず、火と燃える闘魂をたぎらせて、疲れたわが身にむちを打つ。汗とほこりにまみれ、身を挺してホシを追う執念、きのうも、きようも、またあすも。
―これがわれわれの根性である―
◎心と心の触れ合い
「お世話になりました」「しつかりつとめてこいよ」〜送られるホシとの寸話。
「あの刑事さんになら何でも話できる」〜マチの声。
「悪いヤツをパクルのは刑事だが、刑事をやるヤツに性(しよう)ワルはいない」〜刑事のつぶやき。
常に人の中にあつて、人を相手にし、人が人を判定する。そこには人としてのまごころ、これあるのみ。
―これがわれわれの誠意である―
◎物からものを聞く
1本の毛から犯人を識別し、1片の金属から凶器を推定し、1塊の土砂から犯人のアシを割り出し、もの言わぬ死体から犯行の物語りを聞く。そこには永年の経験、実験から編み出された法則、そして科学に裏打ちされた真理がある。
―これがわれわれの科学である―
◎話上手より聞き上手
2回目よりも3回目、ついつい真情にうたれて、あれほどかたくなにとざされていた相手のくちびるが開いてくる。
聞き込み、取調べにあたり、われわれに必要なことは、聞かせることよりも聞くことにある。そこには、人に教えられて得たものではない、自らの実践で体得したワザがある。
―これがわれわれの技術である―
◎どんな役にも誇りを
ホシを追う組もあれば、ドブ川で凶器を探す組もあり、動機の裏付けに懸命な組もある。
また人生経験豊かで温厚なA係長、いささか性急であるが正義感の強いB刑事、いぶし銀のようなC部長、それぞれが個性、特徴を出し合つてみごとに調和する。そこには、ナワ張りもなければ、個人プレーもない。
犯行の点と点を結び、署と署が助け合い、力を合わせ、境界のない犯人の速いアシを封ずる。
―これがわれわれの組織である―